京都大学高専会
体験記(Hanshin_Kabao)

ハンドルネーム

Hanshin_Kabao

編入学年度

平成18年度

京都大学での学科・コース

地球工学科 土木コース

出身高専・学科

明石高専 都市システム工学科

高専時代の順位

 平均5位くらい。僕のクラスは1位が平均96点、上位10位が平均90点以上で0.1点のオーダーで順位を争っていたハイレベルなクラスであった。京大編入試験では高専時代の順位は関係なし。

他大学の受験状況

  • 神戸大学
  • 専攻科

 両者とも京大合格発表後に試験であったため受験辞退し未受験。

 併願するならば、傾向や試験科目が似ている大学を併願することがいいと思います。

編入試験の出来

英語

 昨年までの過去問を見ると、冷や汗のでるほど難しい長文がでています。英語のウェイトがどのくらいかはよくわかりませんが、他の受験生もほとんど出来ないため、テストの出来がよくなくても合格することができます。当然、英語で他の受験生に差をつけることができれば合格率は格段に上がるでしょう。

i. 試験の内容と出来

  • 長文読解。アンダーラインの部分の和訳。
  • 英文を読んで日本語200字程度でまとめる要約問題。
  • 日本語英訳。

 今年の英語の問題はすこし簡単になっていましたが時間がたりませんでした。出来は6割ぐらいと思います。1番の長文の内容はイマイチわからなかったのですが、部分的な和訳を無理やり書くことができます。英文要約の練習をしていなかったため2番の問題の内容をどうやって要約すればいいのかわからず、うまくまとめることができませんでした。3番の日本語英訳は得点源だと思います。英単語をしらない日本語が出てきても語呂合わせで無理やり英語単語を作ってやれば英文は書くことができます。

ii. 最近の傾向と対策

 テストの構成は長文読解・英文要約・日本語英訳です。高専生の英語能力は個人差があり得意・不得意がはっきりしています。自分に英語力が足りないと思う人は早めに英単語等を覚えながら英語を勉強していきましょう。TOEICも積極的に受験してください。英文要約については英語の先生に相談してください。以下に使った単語帳と参考書を挙げます。

  • (1)速読英単語 入門編、風早寛著、増進会出版社
  • (2)速読英単語 必修編、風早寛著、増進会出版社
  • (3)速読英熟語、温井史郎著、増進会出版社
  • (4)大矢英作文講義の実況中継、大矢復著、語学春秋社

 どの本もどこの本屋にも売っているベストセラーです。別に速読英単語でなくてもターゲットなどの他の単語帳でもいいと思いますが、英文読解の練習も兼ねることができるこの本をお勧めします。実は速読英単語の上級編も購入していたのですが、難しくてほとんどやっていません。(4)の内容は高校受験レベルの本で間違いやすい英作文を例文等交えながら教えてくれます。

数学

 工学部において数学は必要不可欠なため、数学もかなり重視されているはずです。平均値の定理の証明といった基本的なことを聞かれてくることが多く、いわゆる「底辺からの理解」が必要です。問題は難しいことは難しいのですが、問題によってはヒントが書いてある場合が多く解きやすくなっていることがあります。

i. 試験の内容と出来具合

  • ラグランジュの乗数法を用いて関数の最大値を求める問題。
  • 積分に関する平均値の定理を用いた証明。
  • 二項分布とポアソン分布に関する問題及び大数の法則を導く。
  • ラプラス変換式?を使った微分方程式を解く。

 書いたこと全部が合っておれば7割ぐらいと思います。試験にでないと予想していた「ラグランジュの乗数法」が見事に1番にでてきて解けませんでした。2番は平均値の定理を駆使してなんとか証明できました。3番は以下に挙げる確率の参考書をやれば解けるはずです。4番はヒント付でしたのでなんとかなりました。

ii. 最近の傾向と対策

 今年の試験は毎年出てきていた行列の問題は出ませんでした。試験の傾向をかなり大まかに分類すると、微分積分・代数・確率に加えて、残りは予測不可能の問題となります。微分積分の範囲はかなり広く変動します。微分積分の基礎を聞いてくる問題や証明は多くありますが、高専の数学をよく読むことで大部分をカバーできます。以下に使用した教科書と問題集を挙げます。

  • (1)高専の数学1、2、3と問題集1、2、3、田代嘉宏・難波莞爾共著、森北出版
  • (2)確率・統計、薩摩順吉著、岩波書店
  • (3)入門線形代数、三宅敏恒著、培風館

(1)は編入学の友(ネ申?)と言えるほど重要です。特に高専の数学3の内容は熟読しましょう。なにげに読み飛ばしていた定理や法則の証明がよく試験にでます。問題集2と3は時間があまりなかったのでC問題を中心にしました。問題集1は確率の問題だけやりました。余談ですが高専の数学2の教科書が紛失していたので後輩のT君に借りました。T君ありがとう。(2)の著者の先生は以前に京大の教授であったことがあり、幾つかこの教科書から問題が過去問に出ていることから、この著者が過去問を作っていたことがあると推測でき、今も別の人が少なからず試験問題を作る際に参考にしていると思います。確率・統計とありますが確率の部分だけ読めばいいでしょう。特に二項分布、ポアソン分布の章は試験によくでるため熟読は必須です。(3)は3年時の代数の教科書です。かなり抽象的な表現が多くわかりにくいと感じた本です。原理を理解するより問題をとくことに重点を置くほうがいいと思います。

物理・化学

 京都大学の編入試験において、物理は比較的問題が簡単で得点源であり重視されます。逆に化学の難易度はかなり高いですが、地球工学科ではあまり重視されていないと思われます。物理と化学の試験は同じ時間に行われ、お互いに50点が満点となっています。そのため化学が苦手な人でも物理を満点近くとることができれば十分に合格することが出来るでしょう。

i. 試験の内容と出来具合

  • 物理
    • 振子を物体に衝突させ、粗い面上を物体が移動する距離を求める。
    • コンデンサーの電気容量に関する問題。
  • 化学
    • エントロピーの問題
    • pHの計算
    • 充填率の計算
    • 有機の問題など

     あまり出来なかったためあまり覚えていません。過去問参照しましょう。

 物理9割、化学2割ぐらいだと思います。化学は例年よりも問題数は増えており、すこし簡単になっていましたが、化学をあまり勉強していなかった僕にはほとんどわかりませんでした。過去問は数年前から公開が始まりました。一応試験の内容の概略は書きましたが、詳しくは過去問を参照してください。

ii. 物理の最近の傾向と対策

 物理の内容は基本的には振子を用いた力学と電磁気学です。高専4年で行う応用物理の授業の内容と近く、応用物理の授業を良く聞き有効に時間を使いましょう。以下に使用した問題集を挙げておきます。

  • (1)詳細物理学演習 上・下、後藤憲一他著、共立出版
  • (2)物理学、小出昭一郎著、裳華房

(1)はかなり難しい問題集ですが、どの問題にも解説がついており問題数も豊富ですのでお勧めします。全部やる必要はありません。上巻の前半の力学全般、下巻の前半の電磁気学は必ずやりましょう。僕は僕の先輩と同じように一問とばしで進めていきました。図書館で大量に貸し出しを行っていますが、貸し出し期限とかを考えると新たに購入するのがいいと思います。(2)は応用物理の教科書です。かなりわかりやすい本です。(1)の内容がわからない時などに参考にしました。

iii. 化学の最近の傾向と勉強法

 化学に関しては過去問を持って化学の先生に相談しましょう。相談に行くのは早ければ早いほどいいでしょう。京都大学を受験する人が多ければ勉強会を開いてくれるのではないでしょうか。

面接(口頭試問)

聞かれたこと

  • 構造
    • ひずみと応力の関係を図示せよ。図の各部の名称をのべよ。
    • コンクリートの場合のひずみと応力の関係を示し、ヤング係数の決定法を述べよ。
    • 不静定構造物の問題の解き方をいくつか述べ、計算手順を述べよ。
  • 土質
    • ダイレイタンシーとはなにか。
    • 液状化現象について説明しなさい。
    • 締固めと圧密の違いを述べよ。
    • 圧密の理論式は?
    • 土圧計算において用いられる二つの理論(クーロン土圧とランキン土圧)を挙げ、それぞれを説明せよ。
  • 水理
    • 比エネルギーと水深の関係を図示し、これを用いて跳水現象を説明せよ。
  • 計画
    • 高専では計画学ではどのような内容の勉強をしましたか。(いくつか内容を挙げた上で)そのことについて説明してください。

コメント

 口述試問の内容は高専で一度は耳にしたことがあるでしょう。ここでは箇条書きにして紹介していますが、実際は一つの質問から派生した質問が多く、例えば土質に関していえば、「土圧計算において用いられる二つの理論は?」の問いに対して「ランキン土圧理論とクーロン土圧理論があります。」と答えると、「ではその二つについて説明してください。」となります。内容に関しては毎年似たような内容になっているため、あらかじめ答えを覚えておくと、ある程度スムーズに答えることが出来ます。僕は4割ほど覚えていた内容を答えました。全体の出来は7割ぐらいでしょうか。面接官の方々は受験生が答えに詰まっているのを見て楽しんでいるようでした。僕はやっていませんが、試験前に高専の先生に頼んで面接の練習をしてもらうのもいいかもしれません。口述試問は高専で得た知識を最大限に働かして乗り越えましょう。

受験生へ

 僕は京大になんとか合格することができました。勉強を開始したのも遅く一時はどうなるかと思いましたが、編入学は試験の傾向をうまくつかむことができればなんとかなるものです。この報告書はあくまで合格までの最低限度の勉強法を記したに過ぎません。いろいろ工夫してゆとりをもって時には遊びつつ試験勉強に励んでください。

2007年11月19日 by Hanshin_Kabao