京都大学高専会
体験記(ぬこ)

ハンドルネーム

ぬこ

編入学年度

平成31年度

京都大学での学科・コース

電気電子工学科

出身高専・学科

舞鶴高専 電気情報工学科

高専時代の順位

  • 1年 前期中間:36番
  • 1年 最終成績:9番(学年45位/169人)
  • 2年 最終成績:1番(学年4位/170人)
  • 3年 最終成績:1番
  • 4年 最終成績:1番
  • 5年 最終成績:1番

 席次は学科内(1学科 約40人)の席次です。学年順位は学年末の成績簿にしか記載されない上に2年までしか出ないので、2年までの分を記載しています。高専入学直後に怠けた結果、前期中間試験でかなり悪い点数を取ってしまい(担任の先生からは留年の可能性を暗に仄めかされた)、そこから真面目に講義を聴くようになったのが結果的には良かったのかなと思っています。

他大学の受験状況

  • 舞鶴高専専攻科 電気電子システム工学コース:合格

 京都大学工学部と舞鶴高専専攻科以外は受験していません。周りの学生からは他の大学も受ければいいのにと言われましたが、本当に進学したいと思った or 指導していただきたい先生がおられる教育機関に進学したいと思ったので、2校だけに絞って受験しました。京大は試験科目が比較的少ないので、むやみやたらと他大学を受験して勉強する科目数を増やすよりも、ターゲットを絞って勉強した方が良い結果が出せそうと思ったという点もあります。在学時、母校では専攻科を滑止めにするイメージが強かったのですが、追加で2年間研究に専念でき、修了後は大学の学部卒と同様に院進できるという理想的な環境であると感じていました。現在は専攻科への進学希望者が多くなり、滑止め的なイメージは薄れつつある様です。

編入の勉強を始めた時期と勉強時間

 編入を意識した勉強は4年の夏休み明け頃から始めました。とは言ってもレポートと課題がそれなりにあったこともあり、物理と数学の演習を1日に1時間程度のペースで進めていただけです。ある程度時間を割くようになったのは5年生になってからで、講義と研究の合間に過去問で出題されていた範囲を重点的に問題集で復習しはじめました。5年の初め(4~5月)は1日あたり4時間程度勉強していたのですが、研究が忙しくなったので7月になるまでは1日あたり30分程度(日によってはゼロ)までペースが落ちました。夏休み(8月)に入ってからかなり焦り始め、それ以後は編入試験前日まで1日あたり10~12時間程度勉強していたと記憶しています。また、私はかなり重度のロングスリーパー(10時間程度は眠らないと疲れがとれない)なので、十分な睡眠時間は必ず確保するようにしていました。

一般科目の勉強

英語

 英語が大の苦手でずっと後回しにしていたのですが、とりあえず最低限の単語力だけでも付けようと思い、「つむぐ英単語 (河合出版)」を4年の冬からやり始めました(←始めるのが遅すぎ)。5年になる前の春休み頃にTOEFLの公式テキストをダラダラやっていましたが、試験形式や対策方法があまり把握できていなかったこともあり、全く身についていなかったです...。

数学

 数学は高専で使用していたテキストと「これならわかる工学部で学ぶ数学 (プレアデス出版)」で全体的に荒く復習をした後、「大学編入試験 数学/徹底演習 第3版 (森北出版)」で微積分、線形代数、確率の勉強をしていました。「大学編入試験 数学/徹底演習」は良問が多く、とても良い問題集だと思います(ただし、解説が少し頼りなく感じたのでこれ単体で勉強するのは少し難しいかもしれません)。

物理

 力学については高専の講義で使っていたテキスト「物理学 (裳華房)」で復習をした後、「基礎 物理学演習I (サイエンス社)」という問題集で演習をしていました。電磁気学は「電気磁気学 電気学会大学講座 (電気学会)」のみで勉強しました。「電気磁気学 電気学会大学講座」は京大の電気電子工学科で使用している電磁気学のテキストとほぼ同レベルな上に演習問題も豊富(別途、問題演習詳解が出版されている)なので、かなりお勧めです。これ一冊だけで編入試験に出題される電磁気学のすべての範囲を網羅しています。電磁気学の範囲は全問正解を目指して勉強していた(私にとってはそこが点取りだった)のですが、平成31年度高専編入学試験では謎に電磁気学の範囲が全て電気回路の問題(電気系の人はほぼ知っている田の字回路の合成抵抗問題をさらに発展させた問題)に置き換わったため、電磁気学の勉強は功を奏しませんでした...(あの問題、電気電子工学科志望以外の人たちは解けたのだろうか…)

化学

 化学に関してはあまりアドバイスできることがありませんが、電気電子工学科を受験する場合は他の科目と比べてあまり点数が取れてなくても大丈夫なはずです。一応、受験4ヶ月前に高専1~2年相当の化学を復習したのですが、有機化学の内容(特に芳香族以降の内容)が一切定着しませんでした。高専2年の時はかなり理解していたはずなのですが…。

専門科目の勉強

 口頭試問で何が出題されるのか全く分からなかった為、京大電気電子工学科の1,2年次で学習する内容相当(電気電子工学科のWebサイトで確認した)の範囲から出題しやすそうなものを抜粋して復習しました。具体的には直流回路、交流回路、過渡解析、半導体工学、論理回路を全体的に軽く復習した記憶があります。電磁気学については一般科目の対策で勉強していた為、特に口頭試問の為に勉強はしませんでした。なお、実際の口頭試問では交流回路に関する問題が出題されました。

お薦めの参考書

 私は一冊の参考書をやり込むタイプだったので、あまり多くの参考書は使用していません。
以下は私が使用したテキストの中で個人的にお勧めできるものの一覧です(ほぼこれらしか使っていません)。

英語

  • つむぐ英単語 (河合出版)
  • The Official Guide to the Toefl Test (McGraw-Hill)

数学

  • これならわかる工学部で学ぶ数学 (プレアデス出版)
  • 大学編入試験 数学/徹底演習 第3版 (森北出版)

物理

  • 物理学 (裳華房)
  • 基礎 物理学演習I (サイエンス社)
  • 電気磁気学 電気学会大学講座 (電気学会)

化学

  • チャート式 新化学化学基礎+化学 (数研出版)

TOEFLの点数

  • TOEFL iBT:38

 高専編入試験の合格者最低点数を更新したと思います…。実は、院試で使ったスコアはこれよりもさらに低いです(もう一生TOEFLは受けたくない…)

編入試験の出来

一般科目

  • 数学:60%
  • 物理:67%
  • 化学:7%

 上記の点数は編入試験の成績開示結果に基づくものです(4年の終わり頃に開示しました)。
なので、自己評価ではなく実際の点数です。化学は最初から分かっていましたが、自分自身では数学は7割、物理は8~9割程度とれていたと2年間思っていたので、開示結果を見てびっくりしました(よく受かったなとつくづく思います…)。

※編入試験の成績開示ができることを知り、開示したので本体験記を投稿することにしました。成績開示の結果について、過去に記載した方がおられない様なので公開するか少し迷いましたが、今後編入を希望される方の参考になればと思い投稿します。

面接・口頭試問

形式

 会場は吉田キャンパス 電気総合館の3階、面接官の先生はおおよそ8~10人程度だったと記憶しています。はじめに5分程度の面接があり、その後に続けて15分ほどの口頭試問がありました。

聞かれたこと(面接)

  • なぜ京都大学工学部 電気電子工学科を受験しようと思ったのか?
  • 大学院への進学の意思はあるか?
  • なぜ電気電子分野について学ぼうと思ったのか?
  • 試験の出来具合はどうだったか?
  • 京都大学ではどのように勉強したいか?
  • もし京都大学に合格したら入学する意思はあるか?

聞かれたこと(口頭試問)

 口頭試問は例年通り、専門科目1題と一般科目1題の形式でした(一般科目は数学・物理のうちどちらか一方を選択)。専門科目は交流回路網(5つの受動回路と交流電圧源からなる回路網だったと思います)に接続された抵抗の消費電力が最大となるパラメータ(電源の角周波数と抵抗の抵抗値)を求める問題でした。簡単そうに見えたのですが、それなりに計算量があったと記憶しています。数学は線形2連立微分方程式を行列表現を用いて解く問題、物理はたしか境界条件からフレネルの公式を導出する問題だったと思います。私は数学を選択しました。

コメント

 口頭試問の成績開示結果ですが、75%でした。面接は先生方の反応も良かったので問題なかった(自己評価)のですが、試問でかなりやらかしたこともあり、合格発表があるまで落ちたと思っていました(筆記試験の数学の手応えが受験前の想定よりも悪かったので、口頭試問が致命傷になったと思っていた)。特に数学の試問が酷く、非常に初歩的な計算ミスをしており、面接官の先生から「そこ、計算ミスしているね」と指摘されるまで気付けませんでした…。また、専門科目についても式整理を丁寧にやりすぎたせいで時間切れになり、最後の小問が解ききれませんでした(一応、解く方針が理解できているか口頭で確認がありました)。

志望動機

 高専4年での基礎研配属以降、パワーエレクトロニクス(パワエレ)に関連した研究(太陽電池を接続したDC/DCコンバータの制御)に取り組む中で、パワー回路の制御がとても面白いと感じると同時に、この分野の研究を進めるためには今の自分では知識が不足していると感じていました。高専での恩師が京大の旧電気工学科出身ということもあり、京大に行けば高度な電気工学に関する知識が身につけられるのかなと、4年頃に真剣に考え始めました。また、D進したいと思っていたので、D進者向けの環境がかなり整備されているというのも魅力的でした。当時の私からすると京都大学は雲の上の存在のように感じていましたが、進路指導委員の先生からも目的意識がはっきりしているからチャレンジしてみる価値はあるとご助言いただき、編入試験を受験することにしました。

受験生へ

 最も重要なことは、計画的に勉強をすることだと思います。私の場合、無計画に勉強をしたのでかなり取りこぼしがあり(特にTOEFLと線形代数)、しっかりと計画をたてて勉強するべきだったと感じます(院試のTOEFLでも同様の事故を起こしています...)。編入試験の合否に関わらず、勉強したことは自分の役に立つと思うので(我々工学系の人間にとっては特に)、頑張ってください!

 余談ですが、京大に入学する1ヶ月ほど前、京大で博士を取得された他高専の先生から「京大に進学するとパワエレ系の研究テーマでD進するのは難しいかもしれない」とご助言いただきました(笑)。研究室配属では色々と悩みましたが、高専時代の私が思っていたパワエレ像とはまた異なる方向性ではあるものの、パワエレに関連した研究に取り組むことができているので満足しています。

 編入学後の2年間は単位回収で何かと忙しかった記憶しかありませんが、今から思えばそれなりに充実していたのかなと思います。なお、令和2年度の電気電子工学科編入生から単位認定される科目数が少し増えたらしく、羨ましい限りです(特に英語リーディングが全部認定されるようになったのは大きい)。

 繰り返しになりますが、もっと研究がしたいという人にとって専攻科はとても良い環境だと個人的に思っているので、京大の受験を検討されている方は是非専攻科の併願受験を検討してほしいです。

何かご質問などがありましたら、Twitter(@nukolab)までご連絡いただければ可能な限り対応します。

2022年01月14日 by ぬこ