京都大学高専会
体験記(F.Carmine)

ハンドルネーム

F.Carmine

編入学年度

平成20年度

京都大学での学科・コース

工業化学科 工業基礎化学コース

出身高専・学科

大阪府立高専 工業化学科

高専時代の順位

  • 1年:わかりません
  • 2年:11番
  • 3年:7番
  • 4年:1番

他大学の受験状況

 受験していません

編入の勉強を始めた時期と勉強時間

 元々自校の専攻科へ進学するつもりでしたので、受験勉強という形ではあまり時間を取っていません。5年になって、同じ学校に京大を受験する人がいることを知ってから、少しずつ勉強を始めました。彼の存在がなければ、今の自分は無いかもしれません。夏休み前までは1日1ないし2時間、夏休みに入ってからは1日8時間程度はやっていたと思います。

一般科目の勉強

 一般科目に望みを託していなかったので、過去問を2~3年分やるだけで済ませました。本番の出来も芳しくなくて、よく通ったもんだと今更ながらに思います。私が言えるのは、「英語は勉強すべきだ」と言うことくらいです。何かにつけて苦戦を強いられます。

専門科目の勉強

 専門科目は範囲が限られています。ですから、資格試験の受験勉強でよくあるように、「過去問や例題で演習→補足で参考書を開く」と取り組めば効率的だと思います。私はそのスタンスで勉強しました。ただ、高専で受けた授業中の内容は、人に説明できる程度には理解している前提で、です。その分野に関する基礎知識が無い場合は、そうは行かないかもしれません。

お薦めの参考書

  • 工学のための有機化学、荒井貞夫、サイエンス社
  •  コンパクトかつ体系的にまとまっていて、しかも編入試験に出る内容をほとんど網羅しています。標準とされる教科書(モリソンボイド、マクマリー・・・)とは別に、携帯用として持っておくと心強いです。

  • 基礎有機化学演習、大須賀・東田、サイエンス社
  •  編入試験のためにあるような本。この本一冊網羅するだけで、たいていの問題はクリアです。

  • マッカーリ・サイモン物理化学(上)、千原・江口・斉藤、東京化学同人
  •  上巻・量子論、下巻・そのほか(熱力学など)という、分子論に重点を置いた教科書です。量子論がくどいほど良く説明されている上に、必要な数学も要所要所で補足してくれます。編入試験の対策としても、ずっと付き合ってゆく本としても、おすすめです。豊富な演習問題が用意されて、順になぞって行くことを要求されますし、解説は別売りです。演習書としては不向きです。下巻は好きじゃない。

これがあったら良かったと、今更思う物

  • 線形代数概説、内田・浦川、裳華房
  •  行列の計算からスタートに、ジョルダン標準形まで、演習を通して進むスタンスです。実用指向で、抽象的な議論は弱いですが、これをなぞって行けば、一通りのことは分かるはず。

  • 「物理入門コース」シリーズの諸本、岩波書店
  •  シリーズを通してわかりやすく書かれています。高専で使った物理の本は、一通りの内容を1冊で触れようとするあまり、わかりにくいと思うことがしばしばありました。自分の中で、中途半端な感を受ける内容を、このシリーズの本で補足するとよく理解できました。たぶん図書館に有るでしょうし、買うほどのことはありません。

  • 電磁気学演習、小出、裳華房
  •  ひたすら電磁気学の演習問題が載っています。古い本ですが、各問わかりやすく解説されており、安心して演習できます。編入試験対策としては十分すぎるかもしれません。

  • 無機・分析化学演習、竹田ら、東京化学同人
  •  大学院入試問題を中心に、と銘打って有るだけあって編入試験対策としては十分すぎる内容です。ただ、溶液内平衡論の問題には、編入試験と似たようなものが出題されており、そこだけは取り組んでおくべきです。

  • 演習化学熱力学、渡辺、サイエンス社
  •  編入試験とぴったりのレベルの演習書です。具体的な量を扱う問題が豊富で、問題へ挑戦すれば、熱力学に実感が持てるようになります。

編入試験の出来

一般科目

  • 英語:2-3割
  • 数学:2-3割
  • 物理:4-5割
  • 化学:9-10割

専門科目

  • 有機化学:8-9割
  • 物理化学:9-10割
  • 無機化学:6-7割
  • 分析化学:5-6割
  • 化学工学:9-10割

面接(口頭試問)

聞かれたこと

  • 志望動機
  •  全然考えてなかったので、即興で考えました。迂闊に「レベル」という言葉を口にしてしまい、しつこく突っ込まれました。当然、そういうことは言うべきではありませんね。

  • 他に受験した学校はあるか
  • コースを選んだ理由
  •  「亡き福井謙一先生が『えぇこと言うなぁ』と思ったから。」と答えると、「他にも良いことを仰る先生はたくさんいるよ」と苦笑いされ、別な先生からは「出身は関西か」と聞かれました。

  • 有機化学と、物理化学の両方が良くできているが、理論に進むか実験に進むのか
  •  一般の出来に絶望していたのですが、もしや・・・?と思いました。

  • 大学院へ進学するか
  • 卒研はなにをやっているか
  •  興味を持たれず、非常にあっさりおわりました。

  • 試験の出来について
  •  「一日目の出来がよくなかった」と言うと、「どういうところが悪かったと思うか」と不思議そうに聞かれました。結果が手元に無いのかと思い、不利にならないよう「見直し出来なかったので不安に思う」と茶を濁しておきました。

コメント

 受かったとは思えず、投げやりな受け答えをしたこともあり、面接官の先生方は笑っておられました。所々合格を臭わせる様なことを言われたことで、発表までの数日は、疑心暗鬼に陥っていました。

志望動機

 学校の先生方に尻をたたかれ受験を決めました。きっちりとした志望動機は有りません。

受験生へ

 英語はきっちりと、とは言わずもがな。私のように、よく考えずに受験される方は無いと思いますが、もしあれば問うておきましょう。「本当に京都大学を受ける必要が有りますか?」 周りの人々のモチベーションはかなり高く、特に一緒に編入した人たちと共に大学生活を送ってゆくことは、学問する上では最高の環境だと思います。が、その先に何を求めるのかが重要なことだと、痛感しています。動機付けがしっかりしていないと、編入してから憂き目を見るかもしれません。

2009年03月20日 by F.Carmine